未来の君のために、この恋に終止符を。




「ごめん」

「え?」

「俺がもっとちゃんと言っておけばよかったね。
土曜日は一緒に勉強してたのに、気づかなくて悪い」

「っ、」



脳が足を動かすという指示ができなくなるほど動揺し、喉の奥で息がつまった。

がつんと頭を殴られたような衝撃の後、じわじわと鈍い痛みが広がった。



プリントのことを忘れていたのは私の責任で、晴樹が謝ることなんてひとつもない。

せっかく教えたのにと憤りを感じるならまだわかるけど、どうしてそんなことを言うのかわからない。わかりたくない。



なんとか首を動かして、うつむく。

廊下の模様で視界をいっぱいにした。



……これが私じゃなかったら、昔の私たちだったなら、晴樹はそんなことを言わなかった。

絶対に、なかった。



たとえば、片岡さんや先生。

たとえば、安藤くんをはじめとする友だち。

たとえば、晴樹の周りの、────女の子。



その人たちになら、少しくらい文句を言うんだろう。

それも優しく笑いながら。

口先だけ怒って、デコピンなんかで全てを丸く収めて。



それが晴樹にとって普通なら、私にも「ちゃんと言ってたのに」くらい言えばいい。

……言ってよ。






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