未来の君のために、この恋に終止符を。
・
ぼんやりとした頭のまま、小さくあくびをこぼす。
何度かまばたきを繰り返したあと、ベッドの足元に腰かけている未来の晴樹と目があってしまい、仕方がなく声をかけた。
「おはよう」
「おはよう、実莉」
彼は私からのあいさつに、心底嬉しそうに声を弾ませた。
口から吐き出された言葉が目に見えたなら、きっと美しく輝いていたんだろうなとふと思う。
そんなばかなことを考えつつ、ぐっと伸びをした。
あれから────英語の試験を無事に乗り越えてから、3日が過ぎた。
もういくつもの試験はこなした。
英語のプリントの後半は完全に覚えていたわけじゃないけど、単語や他の部分でなんとかカバーできたんじゃないかと思う。
今のところ成績に問題はなさそうだ。
晴樹はあの会話の直後、すぐに普段どおりに戻った。
遅刻しちゃうし急ごうか、なんてふわふわと綿毛のような笑みに切り替えて試験を受ける予定の教室に向かったんだ。
一緒に帰って、試験勉強して、登校して、晴樹との会話は確かにあるのにまるでなにもなかったかのような態度だ。
それは、そう。
「おはよう、実莉。
行く用意は済んだ?」
ノックのあと部屋に入って来た現在の晴樹は、今朝も普段となんら変わりない。
しかも未来の晴樹と声のかけ方が同じだ。