未来の君のために、この恋に終止符を。
「行かない方がいい」
「え?」
「明日の映画は、行っちゃだめだ」
顔を上げて、まっすぐな瞳が向けられる。
焼かれてしまいそうに熱い、そんな熱を感じる視線だ。
「どうしてそんなこと言うの」
晴樹と共に過ごすのは、辛い。
自分と彼との違いを、差を、感じるから。
近くにいるのに、だからこそさみしくなるから。
それでも私は離れられないし、そばにいたいと思う。
……好きだから。
だからその時間を奪われるなんて、いやなんだ。
「その日、俺たちはデートの最中にクラスの何人かと遭遇した。
崇人とか、俺がよくつるんでるやつらと……菜津が来たんだ」
菜津────立川 菜津(たちかわ なつ)。
それは、この前晴樹に山を張ってもらっていた女の子の名前だ。
丁寧に巻いてある、キャラメル色のロングヘアの持ち主。
毎日完全な化粧で装備していて、派手な顔立ちをしている。
クラスの中で誰よりも晴樹への好意をはっきり示していて、私は正直に言って得意じゃない。
「そしてそのままみんなで観ることにして。
君はきっと……傷ついていた」
まるで本当にあった過去のように語られて、私はどんな反応を返せばいいかわからない。
何度ももしかして、という言葉が頭をよぎる。
それを首を振り、必死で振り切って、それでもまた不安が忍び寄る。