未来の君のために、この恋に終止符を。
「そろそろ映画館に向かおう」
無理やり話を断ち切るために、腕時計を見てそう言う。
納得いかない、と表情で語りつつ、晴樹も自分のもので時間を確認してそうだねと応えた。
心を残していかないように、背筋を伸ばして店を出た。
映画館は私たちが今いるショッピングモールの最上階だ。
そのままふたりでエレベーターへと向かう。
デートなら恋愛ものを観る方がいいのかもしれないとは思うけど、そんなの私には似合わないし好きじゃない。
付き合いが長いだけあり、晴樹はそんな私の好みをよくわかってくれている。
だから今日観るのは、小説が原作のミステリー。
その本を読んだことがあったから、映画化が決まった時から見ようと思っていたんだ。
少しの浮遊感ののち、あっという間に最上階へ運ばれた。
さりげなく周りに視線をやったあと、なにごともなかったかのように顔を正面に戻す。
未来の晴樹が言うには、ここに安藤くんたちがいるとのことだったけど……いない。
はぁっとため息をこぼす。
信じないと思いつつも少しだけ気になっていたから、うそだということが証明されて、肩の力が抜けた。
適当なことを言って、なんだったんだろう。
未来の晴樹の発言を疑問に思いつつも、目の前に広がるのは、ただ映画館特有のぼんやりとした曖昧な明かりしかない暗い空間。
まだスクリーンの前じゃないというのに、自然と小声になる。