未来の君のために、この恋に終止符を。
このまま立ち去ってしまおうか、と考えていると、
「菜津は忠犬じゃないだろ。
どっちかっていうと躾のなってない、駄犬」
「崇人、失礼!」
親しいからという理由だけじゃない気がするほどの毒舌。
深い茶色の短髪は、爽やかというよりヤンキーに近いような髪型で、彼の心を表しているかと思うほど尖っている。
鋭い瞳はやましい部分を見透かしているようで、正直安藤くんのことは少しこわい。
そう思っているけど、
「だからほら、迷惑かけてないで行くぞ」
意外にも、彼がこの中で1番私の気まずさを理解してくれていたらしい。
言い方はやっぱり雑だけど、気を遣ってくれたのかな。
そう思うと、いつもより恐怖心は抱かない。
立川さんがいて、安藤くんがいて、他にも何人か晴樹の友だちがいて。
未来の晴樹の言っていたとおりの状況だけど、安藤くんのおかげで私は今、そこまで辛くない。
だからきっと、違う。
未来の晴樹の言葉のままの出来事なんて、傷つくことなんて、起きない。
立川さんとは違う、なんの色も乗せられていない爪を指の腹でなぞる。
ネイルなんて校則違反、する気もないくせに、短く切られた剥き身のそれを無性に隠したくなった。
自分の世界に閉じこもっている間も、周りは盛り上がったまま。
知らないうちに話が進んでいたらしく、突然、立川さんに腕を組まれた。
「同じ映画なんだし、一緒に観ようよ!」