未来の君のために、この恋に終止符を。
ね? と笑みを向けられて、頰が強張る。
それはありえない提案で、受け入れられるはずがない。
彼女が求めているのは晴樹だけだというのに、私と彼の時間を奪おうとしているのに、了承するとでも思っているんだろうか。
長い袖に覆われた腕が、立川さんのなめらかな素肌に包みこまれる光景に瞳がちかちかした。
病的なまでに白い私と違い、健康的な色だ。
「いいよね、花沢さん。
晴樹とだけ一緒にいるなんてつまんないし、飽きちゃうよね」
それは、私に向けられた嫌味だ。
晴樹としか時間を共に過ごさない私に飽きられるよと告げている。
それを鵜呑みにするわけじゃないけど、的はずれではないだろう。
いつの日か、必ず彼は私をいやになって、耐えられなくなる時がくる。
未来の晴樹がもし本当に晴樹だというなら、それはきっとそういうこと。
私のことが心底いやになったから、来た。
……そう思うから、私は彼を晴樹だと信じたくないんだ。
身勝手にも自分の視界を狭めて、私は未来の晴樹から目をそらしている。
今日映画に行くことも反対されていたというのに。
立川さんは可愛くて、自分に自信があって、だけど狡猾だ。
そんな彼女よりずるく、汚れた感情を抱えている私は手に負えないな、と自分で考えて乾いた笑みをこぼした。