未来の君のために、この恋に終止符を。
うしろからは晴樹の友だちが、よかったね、ちょっと泣いた、と口々に感想を言いあう声が耳に届く。
だけど晴樹はそこに混ざることなく、私を気遣っている。
もしかすると、私が立川さんと晴樹の手が重なったところを見ていたと知っているのかもしれない。
「晴樹、ごめん。自分で持つ」
「どうせ捨てるんだから平気。一緒に捨てるよ」
あっという間にごみ箱へと近づいて、そこへ放りこむ。
ね、と目を細めて笑う。
私はどんな表情をすべきなのか、わからない。
純粋に喜ぶことはできないけど、しかめ面をすることも彼に失礼だ。
迷いを隠すことができず、動揺しつつも唇を開いたところで、
「っ!」
左半身が冷たくなった。
「実莉⁈」
「きゃー、花沢さん、ごめん!」
濡れた感覚に、騒がしくなる周り。
どうやら立川さんのジュースの残りをかぶったらしい。
白いセーラーが氷で薄まったオレンジ色に染まっている。
状況が理解できず、ただ呆然とする。
直立不動のままの私の袖の先から、ぽたぽたと雫が落ちた。
「大丈夫⁈ すぐに洗いに行こう」
そう言って焦る晴樹が私の腕をつかんだ。
長袖の、セーラーの張りついた、私の腕を。
「っ、」
息を呑んで、反射的に腕を振り払う。
自分自身で腕を抱き寄せて、顔をぐしゃりと歪めた。