未来の君のために、この恋に終止符を。
自由席だったことが仇となり、安藤くんの姿を見た未来の晴樹に隣の席に座るよう促されてしまったんだ。
登校して来るのははやいというのに、安藤くんは眠そうにあくびをしている。
ふあっと小さく声もこぼして、ぎりぎりまで寝ていればよかったんじゃないだろうか。
「そういえば、」
突然安藤くんが口を開き、私は静かに驚く。
淡白な表情が瞳に映る。
まばたきで遮っても、それは向けられたまま。
「映画以来だよな、話すの」
「……まぁ、うん」
というか数えるほどしか言葉を交わしていないのだから、あの日以来ということはなんら不思議ではないんだけども。
でも一応、彼の言葉が間違っているわけではないので怪訝な顔になりつつも、会釈に近い頷きで応える。
私たちの様子を黙って見つめる未来の晴樹が視界の端にいることを確認した。
「デートだったのに、邪魔したな」
「っ、」
思いもしなかった言葉に、どんな反応を返せばいいというのだろう。
あの時確かに私の気持ちを誰よりわかってくれているように感じた。
立川さんを連れて立ち去ろうともしていた。
だけど今になって謝られるほど彼が気にしていたとは思えない。
「ふと思い出したし言っておこうと思って」
違和感を声にする前に、目の前の彼から答えが出される。
つまり、これはタイミングがあっただけだと。
基本的に安藤くんはいつでも何に対してでも共通して面倒そうに過ごしているし、当然か。