未来の君のために、この恋に終止符を。
驚きを隠せず顔をこわばらせたまま、未来の晴樹に顔を向ける。
すると彼は首に手を回して決まり悪そうに、曖昧な笑みを無理やり口元に乗せている。
それは、知られたくなかったと言葉なく語っていた。
目の前には心の溝、深い崖。
いっそのこと突き落としてくれた方がいいというのに、彼は決して私に触れようとはしないんだ。
「ごめん、気にするかなと思って」
晴樹の言葉に息を吸う。
吸って、吸って、躊躇いがちに吐き出す。
「そっか」
自分の声から色を奪う。
静かにこぼしたその言葉は、ふたりともに向けた。
「素っ気ないな、ほんと」
「っ、」
「俺も人のことを言えたもんじゃないけど、晴樹にそういう態度はどうなんだよ」
胸に突き刺さった言葉は鋭く、容赦がなく、じわじわと血がにじむ。
しびれる痛みに心が縮むようだ。
俺たちのことが嫌いなのは見てたらわかるけどと言われてしまい、返す言葉がない。
黙りこむだけの私に彼はさらに畳みかける。
「晴樹の彼女なら、あいつのことだけは信じてやれよ。ちゃんと……大事にしろよ」
苛立ちを隠そうとせず、言いたいことをすべて吐き出したらしい安藤くんは席を立つ。
そのまま教室から出て行く背をぼんやりと見つめた。