未来の君のために、この恋に終止符を。
「実莉……ごめんな。あの日、実莉は15歳の俺になんて会いたくないかと思って黙っていた」
確かに会いたくなかった。
ひとりですべてを誤魔化せる、いつもの私に戻ってからしか誰にも顔を見られたくなかった。
だけど未来の晴樹が私を迎えに来てくれて……嬉しかった。
彼にとっては過去の出来事で、私をとめられなかったから後悔していたんだと思う。
罪悪感に駆られただけの行動。
それでも優しさで包まれて、安心できた。
あの時迎えに来てくれたのが現在の晴樹だったら、私がどんな対応をしたかなんてわからない。
素気なく拒絶して、彼をまた傷つけたかもしれない。
それでも、彼が必死に私を探してくれていたこと。
知らないところで気遣われていたこと。
気づかないままでいたくはなかった。
「それに崇人がきついこと言ったよね。
あいつ、悪気はないんだ……」
「わかっている」
わかっているよ、それくらい。
晴樹のための、友だちとしての、言葉だった。
本当の友だちが晴樹のそばにはいるんだと実感させられる瞬間だったもん。
『晴樹の彼女なら、あいつのことだけは信じてやれよ。ちゃんと……大事にしろよ』
安藤くんの言葉が頭から離れない。
綺麗とは言いがたい心に、ぽたりと黒いしみが増える。
……大事なんて、できるならとっくにしている。
できないから私は、彼は、変わらないんだ。