未来の君のために、この恋に終止符を。
顔をふせたまま、あふれそうになる自分への嫌悪感をこらえる。
吐き気のように胸に渦巻くそれに視界が回る中、左隣の席に人の気配を感じた。
晴樹の向こうから、
「隣、いい?」
という片岡さんの声が届いた。
首を傾げた彼女の動きにあわせてふたつ結びの髪がふわりと踊る。
隣なんてごめんだと思いつつも、断る元気も今の私にはなくおざなりに頷いた。
「ありがとう」
太陽の日差しのように輝く笑みが、私の肌に服の上から突き刺さる。
焦げついてしまいそうで、だけど逃げ出す場所もなくて、ただぎゅっと腕を掴む。
「……花沢さん、調子悪い?」
眉を下げて、いつもより低い声。
低くてもそれは怒っているわけではない、柔らかなトーンだ。
「保健室一緒に行こうか?」
顔、真っ青だよ、と言われて頬を押さえる。
自分では顔色はわからないけど、片岡さんが言うなら多分そうなんだろう。
情けない。
安藤くんの言葉に驚いて、ショックを受けて、それでこんなふうに顔を青くするなんて。
弱いな、と自分で思った。
心配そうに私を見る晴樹と片岡さんの目が煩わしかった。