未来の君のために、この恋に終止符を。
それはそう、未来の晴樹も同じ。
22歳になってなお、私の隣にいなくてはならない。
未来の私から逃れても、現在の私のところで無駄足を踏んでいる。
────ああ、そうだ。
今、隣にいる彼は、私と別れたくてやってきたんだ。
現在の晴樹には言えない、7年以上も抱えたままだった想いを伝えるために。
そのくせ心配そうに私を見つめたりするから、その瞳は真実のものなのか、わからない。
彼と目をあわせる。
まばたきをする。
まぶたを上げて、また彼の瞳に映る自分を確認する。
どう映る。
どう映っている。
私は、醜い心の、私の姿は。
晴樹の凪いだ海の瞳に。
「実莉?」
唇を薄く開いて、晴樹は私の名前を呼んだ。
私の考えていることがなにもわかっていない、気の抜けた空気でありながら、彼の周りはあたたかな春のよう。
今、何度目かの理解の確認。
そのぬくもりは、私には不釣り合いだ。
眩しい。
苦しい。
実感する、私はこの人たちとは、あわないと。
クラスの中心にいるような晴樹たちとは、世界が違う。
「はぁ……」
重たいため息が机いっぱいに広がった。
それに溺れないようにただ呼吸だけをこなす。
真夏の冷たい私の部屋で、できるだけ迷惑をかけないようにするから。
だから溺れる前にはやく、夏期講習なんて終わってしまえばいい。