未来の君のために、この恋に終止符を。




普段なら考えるだけで口に出さないけど、今は寝起きで理性が働かないせい。

自然と唇から問いがこぼれ落ちた。



「なんで顔が赤いの」



私の言葉に晴樹は動きをとめて、目をそらす。

言葉を探すように天井を見たりと視線が泳いでいる。

そして震えた声を絞り出した。



「……夏だから、かな」



その様子を見ていた過去の晴樹も同じように頬を染める。

だけど恥ずかしげに顔をくしゃくしゃにして、それは困ったなぁといった吐息交じりの破顔だ。



明らかにおかしいその光景を無視なんてできるはずがない。

頭が完全に覚醒する。



「そんな誤魔化し方で通用するとでも?」



適当な言葉で、その場限りのうそで、へらりとした笑顔で、隠してばかり。

朝のたいしたことなさそうな出来事にさえ、そんなふうにしか応えてくれない。



その態度が心底嫌いだ。



絶対に理由を言わせてやる、と寝起きとは思えないほど乾いた心と意識で睨みつける。

ベッドから足を下ろし、体を彼に向けた。



「えー……」



どうしよう、と言わんばかりの困った声に眉をひそめる。

余計なことを口にしないよう唇を引き結んだ。



ひとりでぴりぴりとした、静電気でも発しているような空気を醸し出す。

すると未来の晴樹が、私と現在の晴樹の間で視線を揺らした。






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