未来の君のために、この恋に終止符を。
はぁ、と軽く息を吐き出して、未来の晴樹はどこかおどけた仕草で私の元に近寄る。
今の私に彼を構う暇なんてないのに、未来の晴樹には割とそういうところがある。
なんでも受け入れていたはずの私の言葉でも無視して、私がいやと言っても彼は自由な行動ばかりとって。
実際に昨日もその前も学校までついて来て、1日一緒に過ごしたりした。
本当に晴樹かと思うけど、それでもやっぱり優しく私のことを気遣ってばかりで、未来の晴樹は晴樹だと再確認するんだ。
だけど違う。
今は、違う。
そういう優しい彼だとは思えず、鬱陶しいと感じるだけ。
なんなんだ、いったい。
「あのね、」
未来の晴樹が触れないぎりぎりの距離で、私に耳打ちする。
実体のない彼の息がかかることはなく、温度のない風が耳を撫でるだけ。
それなのに、この風を起こしているのは晴樹なんだと考えるだけでそこに熱が集まった。
だけどそれさえも気にならなくなってしまう言葉がその場に落とされた。
「寝ぼけている実莉が可愛かったんだよ」
……はい?
「意識がない状態で甘えてきたから、俺は恥ずかしくなっちゃったんだ」
「っ!」
「15の俺には内緒ね」
未来の晴樹も晴樹で本人には変わりないんだから、内緒だなんておかしな発言だ。
気の抜けるような言葉で、態度で、だけど告げられた内容に感情があふれそうになる。
驚き。
喜び。
恥ずかしさ。
もどかしさ。
愛おしさ。
そして────切なさ。