未来の君のために、この恋に終止符を。
「朝ご飯できてるよ」
しばらくすると晴樹はそう言って、役目は終えたといったふうにリビングへと戻る。
おそらく様子がおかしい私に気をきかせてくれたんだろう。
それでも私はしばらく同じ体勢のまま、顔と掌で熱をわけあっていた。
冷えていたはずの手はもうぬるく、クーラーの涼しい風がもの足りないほどだ。
今日も学校だし、いつまでもこうしていることはできない。
わざわざ起こしに来てくれた晴樹にこれ以上迷惑もかけられないし。
鬱々とした気分になりつつも、着替えのために重たい腰を上げた。
それを見ていた未来の晴樹がぽつりと呟く。
「今の俺なら実莉がなにを考えているかわかるようになったのになぁ」
「……晴樹?」
「でも、だめだね。体を失ってからじゃ、触れられないし」
溶けて消えてしまいそうな、氷に近い儚い雰囲気をまとった彼が音もなく立ち上がる。
「着替えるんだよね? 部屋出てるよ」
私になにも言う間を与えず、彼はするりと廊下へ向かう。
着替え終えて廊下へ顔を出すと、また未来の晴樹はすぐさま入れ替わる。
私は悩みつつも部屋にいるようにとだけ声をかけて階段をとんとん、と小さな音を立てて降りた。