未来の君のために、この恋に終止符を。




いつものように私が着替えている隙に朝食の準備は終えられていて、私が顔を出すと晴樹はすぐさま気がつく。



「あ、おばさん、実莉降りてきたよ。
みそ汁と焼き魚運ぶね」

「ありがとう、晴樹。お願い」



兄妹同然に過ごしてきた過去があるから、ふたりが親しげなのにはなんの疑問も抱かない。

でも自然におたまを出した彼を見ていると、もしかしたら私より晴樹の方が私の家のキッチンを使いこなしているんじゃないかと思う。

それはどうなんだろう、とさすがに不安になった。



こんなところまで高いスペックなんていらないのに。

晴樹は女子力まであるのだろうか。



私の親かと言いたくなるほど世話を焼く晴樹は、もう完全にいつもと変わらない様子だ。



「朝ごはんしっかり食べて、1日頑張っていらっしゃい」



うっすらと頬に笑みを乗せて、そのくせお母さんは私の様子をうかがう。

絡むその視線に煩わしさを感じつつ、とりあえず曖昧に頷いた。



夏期講習なんて終わってしまえと思っても、時間が流れる速度は変わらない。

私を焦がすように、ゆったりと時間が進む。



ああ、今日もまた、暑い夏の憂鬱な1日がはじまる。






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