未来の君のために、この恋に終止符を。
「片岡と一緒にいるところ見てるとさみしいけど嬉しいな」
私の隣にいつもと同じく立っているのは、未来の晴樹。
寄り添うような距離感にわずかに困惑するけど、それよりずっと気にかかるのは彼の言葉だ。
「なにを言っているの」
「いつも俺といてばかりだった実莉が他の誰かと一緒にいると、妬けるんだよ」
「本当に、なにを言っているの……」
どういう意図で言ったのか、どんな返しが求められているのかわからない。
自然と使われた〝妬ける〟という言葉に自分の顔を隠したくなった。
私の今の表情は、正しいものだろうかと不安になる。
「でも実莉がひとりじゃないことが嬉しいの、本当だからね」
うん、と頷く。
こくりとひとつ頷く。
それだけしかできない。
だって本当だとは思えない。
晴樹が本心からさみしいと、嬉しいと、言っているなんて考えられない。
真実だなんてどうやって信じろと言うの。
そんな優しさを向けられる価値を、自分で自分に見出せないのに。
だからきっと、これはうそ。
どんな理由からかはわからないけど、うそだ。
……そうじゃないと意味がわからないから。