未来の君のために、この恋に終止符を。
私を見下ろす彼は息を吐き出す。
絡むようなそれを切り離して、いつもより低い声で小さく呟く。
「そのまま片岡と仲よくなって、俺がいなくてもひとりじゃなくなったらいいな。
それで、俺とは別れてくれるといいんだけど」
ほら、これが本音。
晴樹の行動や発言はこれに繋がっているんだ。
「この前も言ったけど、別れないから」
不思議だね。
別れないと、関係を断ち切らないという言葉なのに、彼を拒絶して心を切り離すよう。
そうまでして繋げることに意味なんてないのかもしれない。
私のただの、執着。
だけど、それでも、
「別れるの、いや?」
「いや」
私が別れを選ぶことはありえない。
「困ったなぁ」
緩い雰囲気のまま、にこにこと笑ってばかみたい。
まるで本気じゃない。
少し満足げで、その答えがわかっていたという態度。
そのくせ聞いてきて、嬉しそうに花びらが舞うような笑みをこぼしているんだ。
私と距離を置くことがない。
心を多く伝えてくれる。
そんな未来の晴樹に対して、私はいまだにどんな態度を取るか定まらずにいる。
だってどうしてそんなふうに笑うのか、私にはちっともわからないから。
今も未来も、晴樹のことはわからないことばかり。
それは、いやになるくらい。
だけど、ひとつだけわかることがある。
「別れて」なんて私がいやなことを言ってくるくせに、晴樹は優しい。
晴樹はいつでも、とても、────優しいんだ。