未来の君のために、この恋に終止符を。
本を完全に閉じることはなく、するりとなめらかに視線を動かす。
閉じられたまぶたに、長いまつげ。
無防備な表情をしていて、薄く唇が開いている。
そんな未来の晴樹をじっと見つめている自分に気がつき、慌てて顔をそらした。
……ベッドが、沈んでいなかった。
彼の重みを感じることはなく、影が落ちることもなにもない。
実体がないことは知っているはずなのに、未来の晴樹の存在にどこか慣れてきている自分がいて。
つい普通の人となにも変わらないつもりで接してしまう。
だけど、それでもふとした瞬間に彼という存在の不自然さを感じるんだ。
思えば私は、未来の晴樹について知らないことが多すぎる。
映画の時のように、未来の出来事で大きなことはないのか。
私に告げてもいいものなのか。
これは、大切なことのはずだ。
おそるおそる晴樹に視線を戻す。
呼吸をしているのかしていないのかもわからない姿を瞳に刻みこむ。
聞いてみたいことはあっても今は寝ているみたいだし、と少し悩んでいるとふわりと自然にまぶたが開く。
寝ていなかったのかと驚いて、本から手を離してしまった。