未来の君のために、この恋に終止符を。
両手を組んで力をこめる。
血のめぐりが悪くなって、しびれるようだ。
そうわかっていても、指先が白くなるのをとめられずにいた。
「いいか悪いかなんて俺も知らないよ」
あっけらかんとした物言い。
あまりにも予想外な発言にそうなんだ、とそれだけをこぼす。
未来を変えることになるかもしれない行動なのに、そんな意識でいいものだろうか。
彼は未来の存在なんだし、変化による影響とかもあるはずじゃないのかな。
わからないことばかりでなんとも言えないけど、少し不安になった。
「ただ、基本的には未来の出来事が悪い方向に変わらないようには気にしてるかな。
特にすることなんてないけど」
そして知らなかった事実をひとつひとつ拾っているんだ。
そう言って彼は切なげに瞳を細めて、私をやわらかな視線で刺した。
「そういうこと、してたんだ……」
「今もそうだよ」
さらりと告げられた言葉にどういうこと? と返そうとすれば、こんこんと廊下から響くノックの音。
反射でどうぞ、と応えて扉の向こうの姿にわずかに動揺した。
「実莉、入るよ」
そこには、いつもと変わらない現在の晴樹が顔をのぞかせていた。