未来の君のために、この恋に終止符を。




中に入って来た彼は「なにかしてた?」と言いながら、私のベッドに向かう。

見事に未来の晴樹を避ける形で腰かけて、私のベッドにはふたりの晴樹が並んでいる。

そうそう見ない構図だけど、現在の晴樹には見えていないから、黙ってその様子を受け入れた。



「読書」

「そっか」



いつもとなにひとつ変わらない行動なのに、わざわざそんなふうに訊いてきていったいなんなんだ。



目線をあちこちに動かして、私と目をあわせようとはしない。

肩に力の入った挙動不審な態度で、私の眉間にはしわが寄る。



「あの、実莉さ……」

「うん」

「最近どう?」

「うん?」



それは毎日一緒にいる人がする質問じゃない。



たどたどしい言葉に、なにを言いたいのかと警戒してしまうことはおかしくないはずだ。

隣にいる未来の晴樹は恥ずかしそうに頭を抱えていて、なんだか少し面白いけど。



うつむいて、耳まで真っ赤に染めあげて。

彼の反応からして、未来の晴樹も実際にした発言、実際にあった場面ということなんだろう。



「間違えた! そうじゃなくて……」



両手を前に突き出して、珍しく焦っている様子は不思議だな。

こんなふうになる晴樹、ここ数年は見ていなかったように思う。






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