未来の君のために、この恋に終止符を。




「それを言いにわざわざ部屋に来たの?」



つんと澄ました表情で晴樹に言葉を投げかける。

本当は嬉しいくせに、そんな様子を見せることができない。

私は可愛げがない。



しばらく沈黙が落ちる。

その間がどう考えても不自然で、なんか言ってよ、と晴樹に向かって言った。



すると彼はなにかを決心したかのように「よし」と立ち上がる。

そしてそのまま私の手になにかを握り締めさせる。



そして、



「誕生日おめでとう」



見下ろしながら、のぞきこむようにして笑った。

可憐な花が1輪、花びらをほどくようだった。



ぱちぱちとまばたきを繰り返す。

晴樹の言葉をなんとか呑みこみ、質問を投げかける。



「……今日、何日」

「7月24日だよ」



それは、16回目の私の誕生日だった。



掌の中にある、小さくて薄い包みをまじまじと見つめる。

予想もしていなかったものを手渡され、どうしたらいいものかと悩んでしまう。



「もしかして自分の誕生日、忘れてたの?」

「うん」



こくりと頷くと、晴樹が呆れたように、それでいて優しく眉を下げる。






< 79 / 214 >

この作品をシェア

pagetop