未来の君のために、この恋に終止符を。
「普通忘れる?」
「夏期講習で夏休みらしくなかったから、自分の誕生日もまだ先だと思ってた」
「カレンダー見よう?」
指先でとんとん、と机の上に置いたままのオレンジ色のグラデーションになっている卓上カレンダーを突かれる。
ページをめくられないか気になり、とめるべきか否かと悩む。
「人の誕生日なのに晴樹はよく覚えてたね」
「当然だよ」
当然なのか。
こういうまめな部分も、彼の周りに人が多い理由のひとつなのかもしれない。
彼は自慢げに少し胸を張って、晴樹は口元を緩ませる。
この部屋に来てから様子がおかしかったのはプレゼントが理由らしく、肩の荷が下りたように力の抜けた柔らかな表情だ。
「実莉の誕生日だけは忘れない」
「っ、」
ねぇ、それはどういう意味なの?
訊きたい言葉をぐっと呑みこんだ。
設置するだけでほとんど確認しない私のカレンダーの中には、唯一晴樹の誕生日だけが書きこまれている。
それがなくてももちろん、彼の誕生日は忘れない自信がある。
たとえ自分の誕生日を忘れても。
晴樹が私の誕生日を覚えていたことが、それと同じような特別な理由だったらいいのにな。
なんて、今日だけは浮かれた想像をしてもいいだろうか。