未来の君のために、この恋に終止符を。

償いだなんて、知らないで





「ごちそうさまでした」



手をあわせると、黙って私が食べる様子を見ていたふたりの晴樹とお母さんが反応する。

向かいの現在の晴樹と、隣の未来の晴樹はにこりと同じ笑顔。

キッチンにいるお母さんの表情は見えないけど、洗いもの持って来てくれる? という声は届いた。



誕生日の次の日でありながら、今日もまた夏期講習があることは変わらない。

慣れないなと思いつつも、そういえば去年は受験のために塾に通っていたから同じ様なものだったかと気づく。

結局のところ私の夏休みなんて暇なんだから、大きな違いなんてないんだ。



だけど、夏期講習は7月いっぱいでおわる。

7月は今週までだから、きっともうあっという間だ。



食器を流しに置くと、お母さんが早速洗剤を手にした。

もこもこと掌を隠す泡を見て、背を向けた。



ひょこひょこと私のあとを着いてくる未来の晴樹が気になる。

だけどお母さんや現在の晴樹の目があるから、一睨みだけでその様子を許した。



「行ってきます」



現在の晴樹とそう言えば、お母さんはわざわざ玄関まで見送り、「今日もあついから気をつけてね」と私の長袖のセーラー服に一瞬だけ視線をやった。

その視線から逃れるように腕を隠す。



「行ってらっしゃい」



今日は着いて来ないつもりらしい、未来の晴樹はいつも通りの抱き締めるような優しい笑みでそう言った。






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