未来の君のために、この恋に終止符を。
「────はい、じゃあここまで」
続きは明日します、と先生が言うと同時に静かだった教室はざわめく。
口々に話す、声と認識できないもの。
文具や紙の立てる音が教室の中で反響し、弾けた。
毎日変わらない、毎日同じ、そんな状態を私もクラスメートと同じように保つ。
黒板の上を黒板消しがすべり、数式を吸いこむように白くくすんだ深緑だけを残した。
数学の担当教員の薄くなった頭皮を視界にとらえるけど、どうということでもない。
私は黙って席を立った。
「待って、花沢さん。
次は古典で同じクラスなんだから一緒に行こう?」
左隣にいた片岡さんは荷物を片づけつつ、慌ててそんな言葉を私に向ける。
先に行かれないようにと、彼女は必死だ。
こんなふうに気遣わなくてはいけないなんて、委員長という仕事は楽じゃないな、とぼんやりと考えた。
はぁ、とため息を転がす。
夏期講習に入ってからずっとこうで、いい加減慣れてきた部分がある。
今更拒絶するのも面倒で、こくりと頷いて応えた。
その様子を見ていた現在の晴樹はなんだか少し嬉しそうに頬を緩ませている。
なにに納得しているのかうんうんと首を縦に振り、まとめた荷物を抱えた。
「じゃあ俺はクラス別だし、先に行くね。
このあとは帰るだけだからまた教室まで迎えに行く」
「わかった」
過保護な晴樹の発言に、短く言葉を返して彼の背を見送った。