未来の君のために、この恋に終止符を。
流れ上、3人で肩を並べて廊下を歩く。
ぽつぽつとふたりが言葉を交わしているのを聞き流していると、突然彼女の顔がこちらを向く。
「言おうと思ってたのに、すっかり忘れてた!」
やけに通る声がその場に響く。
きらきらと星が瞬く瞳にとけてしまいそうになる。
「花沢さん、お誕生日おめでとう!」
「っ、」
予想していなかった言葉に、私は息をつまらせた。
「昨日誕生日だったんだよね?
晴樹から聞いてたから、絶対言おうと思ってたの」
どうして知っているのか、と疑問が頭に浮かぶよりはやく片岡さんが理由を語る。
素直な笑顔が私を照らすようで、思わず目を細めてしまう。
「ほら、せっかくいるんだから崇人も言いなよ」
「でも俺は花沢の誕生日なんて知らなかった。
それに親しくもないのに言われて嬉しいか?」
淡々とした温度のない言葉にその考えはおかしくないなと自然と思った。
たとえば安藤くんに対して私がお祝いの言葉を向けても喜ばれないだろう。
クラスメートの多くだってもしも私に祝われたら……困惑し、眉をひそめる光景が頭に浮かぶ。
そう考えると、なにも言わない方が得策だという考えは間違っていない。