未来の君のために、この恋に終止符を。
「こういうのはね、気持ちだよ。
本当に〝おめでとう〟って思ってるならいいの」
「そうか?」
「ひとりでも多く言ったら、言われた方は特別なんだって思えるよ。
誰かに祝福されることは、それだけで嬉しいものだから」
だからわたしは花沢さんを全力でお祝いしたい!
そう言って片岡さんは堂々と胸を張った。
芯のある、強い彼女らしい姿だった。
その勢いにうながされたのか、安藤くんはたどたどしく言葉を紡ぐ。
「じゃあ、────おめでとう」
じゃあってなんだ、と思いつつものどの奥が熱を持つ。
きゅうと絞られるようで、声を出すこともできない。
私は、誰かに祝ってもらえるような人間じゃない。
ずるくて、最低で、迷惑をかけている人がたくさんいる。
私を嫌いな人は多くて、だけどそれは当然で、仕方がないと受け入れていた。
それでも、こうして晴樹から、片岡さんから、安藤くんから。
「おめでとう」という言葉をもらうことは、なにかを許されているようで、嬉しかった。
「……ありがとう」
こそばゆい感覚に、胸がそわそわと揺らぐ。
つぶやいた小さな声を拾った彼女はまたプレゼント用意するね! と弾んだ声を上げた。