未来の君のために、この恋に終止符を。
口元をばっと両手で押さえる。
こらえようとしているのはなにか、自分でもわからない。
だけどただ、なにもこぼさないように必死で手に力をこめた。
油断するから、調子に乗っているから、こんなことになる。
立川さんの言葉にうそなんてひとつもない。
だからこれは、当然の報いなんだ。
「花沢さん、」
名前を呼ばれて、はっと顔をあげる。
一緒に教室移動をして、ここまで来たふたり。
そばにいないはずがなかった。
話を聞いていないはずが、なかった。
「っ、」
じりじりと後ずさる。
たとえ一言でも、なんの言葉も向けられたくない。
恐ろしくて、恐ろしくて、たまらなかった。
ふたりの瞳を見ることさえもできず、私は身を翻してその場から駆け出した。
背中に届いた私を呼ぶ声は、振りほどいた。
聞かれたくなかった。
知られたくなかった。
立川さんたちのように晴樹を好きな人たちにも、私に優しくしてくれる人たちにも。
だけどもう、明日にはきっと周知の事実となっている。
最低な私がしでかした、晴樹に対して許されることのないことが、きっと。
そのことに怯える自分を、彼を解放しない自分を、心底嫌いだと思う。
それは2年前。
私と晴樹の関係が歪んだ、あの時から。