未来の君のために、この恋に終止符を。
悩んだ末に私が出した結論は、田中くんのいるクラス────3組の様子をのぞくことだ。
たびたび3組には訪れているから、扉から出入りする誰もが私のことを気にとめたりしない。
馴染みすぎだと自分でも思うけど、今回は万々歳だ。
「……いた」
席に着いている田中くんは図書館にいる時と同じように、本を読んでいる。
黙々とページをめくり、背筋の伸びた姿勢がとても綺麗。
時折黒縁の眼鏡を押し上げているけど集中しているんだろう、本から目をそらす様子はない。
このままじゃ私が元々知っていた彼のことしかわからないままだ。
困ったな、とうなっていると、背中から声をかけられた。
「実莉、どうかした?」
名前を呼ばれてはっと顔を向ける。
私の顔を不思議そうに見つめているのは、幼馴染の晴樹。
黒髪に、まだ少し可愛い顔立ち。
綺麗な黒い瞳は澄んでいて、思わず心惹かれてしまう。
晴樹がいるから私はこのクラスによく顔を出していて、こんなにも馴染んでいるんだ。
「晴樹……」
そうだ。
知らないなら知ろうとすればいい。
誰かに聞いてみればいい。
それはできれば、彼もしくは私自身に親しい人に頼む方が気軽に尋ねることができる。
その方がいいに決まっている。
さすがに告白された、なんて恥ずかしいし、なにより晴樹には知られたくないから言えないけど。
それでも少しくらいならきっと大丈夫だろう。