未来の君のために、この恋に終止符を。
「ちょうどいいところに来たね」
「なに、どういうこと?」
首をこてんと傾げている彼に向かって、平静をよそおって質問を投げかける。
「田中くんのことを知りたいんだけど、晴樹はどんな人か知らない?」
「……え?」
晴樹の表情はぴしりと固まって、困惑の色を乗せている。
小さくもらした声は戸惑っていた。
「なんで田中……?」
「そこは気にしなくていいから、とにかく教えてよ」
曖昧な言葉で誤魔化して、ただ彼をせっつく。
気まずさから一瞬だけそらした目線は、すぐに元に戻した。
「田中は……本が好き」
「それは知ってるよ。見ればわかるし」
彼はためらいつつ、うながされるままにゆっくりと言葉を紡ぐ。
私がなにを求めているのかわからないのに、それでもきちんと話そうとしてくれるんだ。
「あとは、真面目で賢い。
たまに勉強を教えてくれる」
「ああ、晴樹ってどっちかって言うとばかだもんね」
「こら、正直に言うなよ。傷つくから」
そんな言葉遊びをして、少しだけくすりと笑う。
そんな中でも頭の中でぐるぐると回るのは田中くんの説明。
晴樹の声で田中くんについて聞くことは、自分で頼んでおきながらなんだか不思議な心境になる。