未来の君のために、この恋に終止符を。
「晴樹、取って」
「なんで」
「だってこのまま放置なんてできないもん。
晴樹は運動神経いいし、登れるでしょ?」
特定の部活には所属していない晴樹は、実は運動なら大抵のものはできるんだ。
脳筋とまでは言わないけど、それに近いものがある。
「……やだ。自分で取りなよ」
晴樹はいつも私に優しくて、文句を言いつつも私のお願いを聞いてくれて。
だから断られたということが理解できず、目をぱちぱちと瞬かせた。
「え、なんで? どこか痛いの?」
「そうじゃなくて、ただ、あれは取りたくない。
実莉宛のラブレターなんて触りたくない」
慌てて声をかけた私に向かって、早口でなかなかひどいことを言う。
言いたいことを言えば、唇を噛み締めて会話を続けようともしない態度だ。
そんな彼の姿に、ほとんど言われたことのないことに、私はショックを受けると同時に怒りを感じた。
頬を思いきり膨らますような子どもっぽいことはしないけど、わずかにむくれる。
「なら、いいよ。自分で取るから!」
勢いよく立ち上がり、木登りなんてしたこともないくせに、木の幹にぺたぺたと触って腕を伸ばしてみる。
掌にざらついた感覚が広がるばかりで、なにをどうすればいいのかわからない。
もたついた私を見かねたのか、背後から地に沈みそうな重たいため息が届く。
ちらりと振り向くと、晴樹はさっきまで私が座っていたところに腰を下ろしている。