セピア -sepia-
出来立て入道雲
「夏休みは中学生としての自覚を持ってー……」
担任のそんな声が教室に響くけど、ここにいる生徒たちは聞いているようで聞いていない。どこか浮かれたような雰囲気が漂っている。
「あと、飲酒とか喫煙とか非行に走らんことー」
担任もさっさと終わらせようとしているのか、真面目に話す気はないらしい。
どうせ毎年同じようなことを言われているわけだし、今さら言わなくても、と思っているのがひしひしと伝わってくる。
隣のみどりは、頬が緩みまくっている。
「はい、じゃあ終わり! また二学期にねー」
担任がそう言った瞬間、あちこちで生徒は騒ぎ出した。
今日は、一学期最後の日だ。
「終わったなー」
「終わった終わった!」
達郎と由香はそう言いながら、鞄を持って立ち上がる。
「え、ちょっと待ってちょっと待って……!」
みどりは緩んでいた頬を引き締め、我に返ったらしく、慌てて荷物を詰め込み始めた。
どうやら置き勉を持ち帰っていなかったようで、みどりの引き出しからは次から次へと教科書やノートが出てくる。