セピア -sepia-



「みど、柊、はいどうぞ」


そんな声に顔を上げれば、たっくんが苦笑しながらケーキが乗ったお皿を渡してくれる。


「ありがとー」

「せっかくの由香の誕生会なんやから、二人とも今日くらいは大人しくしといてな」


そう嗜められて、ようやく我に返った。


「そうやった! たっくん言ってくれてありがと!」

「え?」

「ちょっと待って!」


不思議そうな三人の視線を受けつつ、そばに置いてあったカゴバッグを漁る。ガサゴソと音を立てながら目当てのものを見つけて、引っぱり出した。


「はいっ、由香、おめでと!」


今日何度目かの台詞と共に、袋を差し出す。

中に入っているのは、ジャスコの専門店街にある雑貨屋さんで買ったプレゼントと、昨日の夜に書いた手紙。


「わ、ありがとう」


由香は穏やかに微笑み、それを両手で受け取ってくれた。


「俺もプレゼントあるで、ちょっと待って!」


思い出したようにそう言って、たっくんは立ち上がり、部屋から出て行く。


「ごめん由香、何も用意してないんだけど」

「全然気にしやんくていいよー、祝ってもらえるだけで嬉しいから」


由香は笑顔でそう言うけど、柊は何かを考えているような顔で。


「じゃあ、また今度、何かプレゼントする」

「ふふ、柊は真面目やねー」


ありがとう、と呟くように由香は言って、あたしが渡した袋の中を覗いた。



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