セピア -sepia-
君といた、あの夏
がたごと、がたごと。
軽トラの荷台はよく揺れる。
あたしは体育座りをして、遠ざかっていくこの町の景色を眺めていた。
田んぼでは稲刈り機がゆっくりと動いている。ふっと空を見てみると、太陽があたしたちに付いて来ていた。
柊は黙ったまま。
あたしも、黙ったまま。
何か言いたいことがあるはずなのに、上手く言葉に出来なかった。浮かんでくるのは、どうでもいいことばかり。
もやもやと輪郭のない感情が広がっていた。
膝を抱えていた腕を解く。景色を眺めつつ、手を付こうとすれば、右手の小指が軽く何かに当たった。
「わ、ごめん」
「……別に」
それは柊の左手で。
咄嗟に引っ込めようとしたけど、それだと意識してるみたいに思われそうだったから、少しだけずらして柊の左手の近くに右手を置いた。
軽トラは山道に入り、荷台はさらに揺れ出した。葉と葉の間から漏れる光が眩しい。
「みどり」
「んー?」
「……何でもない」
「え、そう言われると、余計に気になるんですけども」
「気にすんな」
「そんな無茶な!」
隣を見上げると、柊はふいっと顔を背ける。