セピア -sepia-
ドン、と大きな衝撃がきた。反射的にハンドルから両手が離れる。
――……、ぶっ飛ぶ!
そう思った。
あたし、もうお陀仏になるのか。
十五年、なかなか楽しく生きられたよ。
由香、たっくん、トシちゃん、みんな。
短い間だったけど、ありがとう。
……って、ダメダメ。あたし、こんなとこでお陀仏になる予定なんてなかった。
まだやりたいこといっぱいあるのに。ビッグニュースだって伝えてないままだし。
そんなの、そんなの、そんなの嫌だ!
心の中で、あたしは叫んでいた。叫びは何度も繰り返され、こだましている。
この世の最後に見たのがトシちゃんだなんて、あたしの人生何だったの。それならせめて、この町の景色を、と気力でうっすら開いた瞼。
視界に入ったのは、……黒? あれ、学ラン?
でも、学ラン着た人なんて、この町には一人も――……。
そこであたしの意識は、ぶっつり途切れた。