スノウ・ファントム
◇初雪
一月。
高校二年の冬休みが明けて少し経った頃の、放課後の帰り道。
私は自分の前を歩く男子の丸まった背中を見つめながら、思う。
こんなに寒い雪の中を、上履きのまま帰るのは、どれだけ寂しくて、どれだけ悔しいんだろう、と。
……でも、思うだけ。決して彼に声をかけることはできない。
傘の柄を握りしめ、一定の距離を保ったまま、帰る方向が同じ彼の背中を追いかける。
(意気地なし……)
私はきゅっと唇をかんで、雪で汚れたアスファルトに視線を落とした。
私佐々木菜子(ささきなこ)と、前を歩く彼、葉村理久(はむらりく)くんは同じ高校のクラスメイト。
そして私は、一年のころから彼に片思いをしている。……ううん、していた、かな。
今は、彼を好きだっていう気持ちに蓋をして、鎖でぐるぐる巻きにして、鍵までかけて、絶対に他人にばれないようにしている。
……その理由は、彼がクラスでいじめられているから。
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