スノウ・ファントム


 * * *


その日はもうルカが現れることはなく、翌日も一日中会うことはなかった。
だから、今隣にいるルカと顔を合わせるのは二日ぶり。

傘はいつでも返せるように毎日持っているのだけれど、今日は学校帰りに予想外の雪が降ってきたから、返すつもりだった傘を使ってしまった。

そのことをルカに話すと、「いいよ。もうその傘はキナコのもの」と笑って許してくれたけれど……。


「その代わり、俺も入れてくれる?」

「え?」


悪戯っぽい瞳に顔をのぞき込まれたかと思ったら、私の手から傘を奪ったルカが、二人の頭の上に傘を差しなおす。


(あ、相合傘……?)


男の子と特別親しくなるなんていう経験がまだない私にとって、かなり恥ずかしい状況。

不覚にもドキドキしつつ、胸の中には別の痛みも生まれていた。


(振り向かないで……葉村くん)


未だ私たちの数メートル先を歩く背中を見つめて、私は心の中で祈る。

こう思ってしまうのは、やっぱり私がまだ葉村くんを好きな証拠なのだろうか。

私が誰と相合傘をしていようが、彼のほうはきっとなんとも思わないのに……。



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