スノウ・ファントム


(この人たち、葉村くんの……)


というか、この間、私と彼を教材室に閉じ込めた男子たちと同じ顔ぶれ。

あのときは早苗のおかげで事なきを得たけれど、頼りになる彼女は帰ってしまった。

いやな予感しかしない。また、何かされるのだろうか。

身を硬くしてじっとしている私の耳に入ってきたのは、ねっとりといやらしい低い声。


「……佐々木さんさー。それ、葉村にあげるやつだろ?」


それ、というのは私の机の上にある紙袋のことだ。

一生懸命作って、ラッピングして。机の脇でその袋が揺れるたびになんだか恥ずかしくてくすぐったくて、落ち着かなくて……。

でも、“あげない”という選択肢は不思議と浮かばない、大切な人のためのプレゼント。


「……ち、がう」


かすかな声だけど、正直に否定する。すると、男子たちはそろって鼻で笑った。


「いーよ照れなくたって。今日もずっと葉村のことちらちら見てたし、好きなんだろ?」


……そうか。この人たちは、私と葉村くんをそういう関係にして、からかって、面白がるっていう、新しい遊びを見つけたんだ。

この間の閉じ込め事件も、きっと同じこと。


「教材室で、葉村に襲われなかった? あいつも男だからなー!佐々木さんのこと食っちゃってたらどうしようって、後から心配してたんだよ、なぁ?」


発言した男子が同意を求めると、全員が低い声で笑う。

最低だ。この人たちのしてること。

そうはわかっていても、言い返す言葉が思いつかず、唇に歯を食い込ませることしかできない私。



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