スノウ・ファントム


(どうしたらいいの……? 彼らはいつこの遊びに飽きてくれるの……?)


たった二度、彼らの標的にされただけの私でさえ、こんな風に思うのだ。

葉村くんの毎日の学校生活は、きっと想像を絶するつらさ。

それが、二学期から今までの約半年、ずっと続いているなんて。

彼を取り巻く状況の深刻さを、身をもって思い知らされる。


(……ねえルカ。少しだけ、葉村くんと話す時間をちょうだい?)


今日は、地上にある雪が少ない。

本当はすぐにでもチョコを渡したいけれど、人の気持ちがわかるルカなら、私をきっと待っていてくれる。


――ガタン!

突然席を立った私に、男子のうちのひとりがおおげさにびくつく。


「……バレンタインチョコくらい自分で渡しに行くから、そこをどいて」


そうしてその一番気の弱そうな男子をキッとにらみつけると、私のためにそそくさと道を開けてくれた。

他の男子は不満そうだったけれど、引き留めるほどの情熱はないみたいだ。

本当は少し怖かったけれど、そんな自分を鼓舞するようにふん、と鼻を鳴らして、葉村くんの席のほうへとずんずん向かった。


明日から、もっとひどいことをされるかもしれない。

靴を隠されて、雪の中を上履きで帰らなくちゃいけないかもしれない。


……そうしたら、私も雪と友達になろう。

ルカのように笑って空を見上げて、傘を差さなくても寒くないんだって。

ただの強がりかもしれないけれど、そう思えば心が鎧をまとったように強くなる気がした。


< 101 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop