スノウ・ファントム
(どうしたらいいの……? 彼らはいつこの遊びに飽きてくれるの……?)
たった二度、彼らの標的にされただけの私でさえ、こんな風に思うのだ。
葉村くんの毎日の学校生活は、きっと想像を絶するつらさ。
それが、二学期から今までの約半年、ずっと続いているなんて。
彼を取り巻く状況の深刻さを、身をもって思い知らされる。
(……ねえルカ。少しだけ、葉村くんと話す時間をちょうだい?)
今日は、地上にある雪が少ない。
本当はすぐにでもチョコを渡したいけれど、人の気持ちがわかるルカなら、私をきっと待っていてくれる。
――ガタン!
突然席を立った私に、男子のうちのひとりがおおげさにびくつく。
「……バレンタインチョコくらい自分で渡しに行くから、そこをどいて」
そうしてその一番気の弱そうな男子をキッとにらみつけると、私のためにそそくさと道を開けてくれた。
他の男子は不満そうだったけれど、引き留めるほどの情熱はないみたいだ。
本当は少し怖かったけれど、そんな自分を鼓舞するようにふん、と鼻を鳴らして、葉村くんの席のほうへとずんずん向かった。
明日から、もっとひどいことをされるかもしれない。
靴を隠されて、雪の中を上履きで帰らなくちゃいけないかもしれない。
……そうしたら、私も雪と友達になろう。
ルカのように笑って空を見上げて、傘を差さなくても寒くないんだって。
ただの強がりかもしれないけれど、そう思えば心が鎧をまとったように強くなる気がした。