スノウ・ファントム


気持ちが重たく沈んでいくのを感じながら歩いていると、隣からスッとルカの手が伸びてきて、私の頬に手のひらをぴたっと当ててきた。


「つ、冷たっ……! 何するの!」


思わず立ち止まって大きな声でルカを責めるけど、ルカの視線は私ではなく、前方を向いたまま。

その視線を追った私の胸は、どくん、と大きく脈打った。

さっきまで背中しか見えていなかった葉村くんが、わずかにこちらを振り返っていたから。


(私が、大声出したから……? こっち、見てる……よね)


葉村くんが何を思っているのかはわからない。でも、一瞬だけ視線が合った気がした。

たぶんそれは一秒か二秒くらいで、葉村くんはまたすぐに前を向いて歩き出してしまったけれど、私はショックで足が進まない。


(でも……私がショックを受けるほど、葉村くんはなんとも思ってないよ)


そう自分に言い聞かせている途中、ふとあることを思いついて、ルカに問いかける。


「ねえ、ルカ……。今、あの男の子が何を思っていたかも、ルカには聴こえたの?」


ルカはしばらく無言だったけれど、やがて寂しそうな微笑を浮かべながら、私に質問を返してきた。


「……キナコ、知りたい?」


私は口を開きかけて、けれど答えに詰まって唇を引き結ぶ。

ルカなら葉村くんが何を思っていたかわかるのかもしれない。だからって、それを知りたいかと言われると……。

私は少し悩んで、結局首を横に振った。


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