スノウ・ファントム
ごく少人数の親戚たちとの通夜や葬儀を終えても、葉村くんの心には罪の意識が残ったままだった。
彼は毎日のようにお姉さんの遺影に謝ったけれど、胸のつかえはなかなか取れない。
それでも時間は過ぎていき、夏休みが明けて、二学期が始まった。
ずっとふたりで生きてきた、たった一人の家族を、自分のせいで失った。
そんな意識が心に棲みついていては、普通の学校生活は送れそうになかった。
友達に挨拶されても、返事をする気力がない。
それから周囲に距離を置かれはじめたけれど、なんとも思わなかった。
悪口を言われても、汚いもののように扱われても、反論しようなんて意欲は皆無。
暴力はさすがに痛かったけれど、それは肉体の痛み。彼は心に殻を作ることを覚えて、殴られても必要以上に傷つかないようにした。
――それは確かに、私が知る今の葉村くんの姿だった。