スノウ・ファントム







「本当に、絶対、もう、危ないこと、しない……?」

「うん、ありがとう。ちゃんとまっすぐ家に帰るから、心配しないで」


チョコを渡したあとの葉村くんの笑顔は晴れやかだった。

きっと、私の思い、わかってくれたんだ。安堵の気持ちが胸に広がる。


「じゃあ……また明日ね?」


教室を出ていこうとする葉村くんの背中に、念を押すように声を掛ける。

彼はかすかに振り向いて、小さな動作でうなずく。そして、ふと思い出したように口を開く。


「……そうだ。ルカを呼んでくるよ。僕、実はルカの居場所を知ってるんだ。佐々木さんがここにいるって伝えてくるから待ってて?」

「ルカの居場所……?」

「うん。……だから、ここにいてね」


どういうことだろう。ルカは、もう地上に降りてきているのだろうか。

詳しいことを聞けないまま、葉村くんが廊下に出ていくのを見送った。


……とにかく、今からここにルカが来る。

渡すはずだったチョコがなくなってなんだか心もとないけれど、事情を話せばルカもわかってくれるよね。


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