スノウ・ファントム
*
「本当に、絶対、もう、危ないこと、しない……?」
「うん、ありがとう。ちゃんとまっすぐ家に帰るから、心配しないで」
チョコを渡したあとの葉村くんの笑顔は晴れやかだった。
きっと、私の思い、わかってくれたんだ。安堵の気持ちが胸に広がる。
「じゃあ……また明日ね?」
教室を出ていこうとする葉村くんの背中に、念を押すように声を掛ける。
彼はかすかに振り向いて、小さな動作でうなずく。そして、ふと思い出したように口を開く。
「……そうだ。ルカを呼んでくるよ。僕、実はルカの居場所を知ってるんだ。佐々木さんがここにいるって伝えてくるから待ってて?」
「ルカの居場所……?」
「うん。……だから、ここにいてね」
どういうことだろう。ルカは、もう地上に降りてきているのだろうか。
詳しいことを聞けないまま、葉村くんが廊下に出ていくのを見送った。
……とにかく、今からここにルカが来る。
渡すはずだったチョコがなくなってなんだか心もとないけれど、事情を話せばルカもわかってくれるよね。