スノウ・ファントム


「なら、俺も言わない。まあ、知りたいって言われても教えるつもりなかったけど」


その言い方だと、やっぱり葉村くんの心の声もルカには聴こえていたんだ。

つまり、ルカは私が彼にどう思われているのか、簡単に知ることができる。

それに加えて、私の気持ちも、ルカには手に取るようにわかっていて――。


「……ばかにしてるの? 私のこと」


手がかじかむほど寒いのに、体の中は怒りで熱くなっていた。

そういえば、どうしてルカはいつも私につきまとうのか、その理由をまだ聞いたことがない。

でもきっと理由なんかなくて、思ったことを口に出すのが苦手な、私のような不器用な人間を見て楽しんでいるんだ。


「キナコ……それは違うよ、俺は」


そこで言葉を切ったルカは、真面目な顔をして私を見つめる。その瞳がはかなげで、怒っていたはずの気持ちに罪悪感みたいなものが加わっていく。

……ルカは何を言おうとしているんだろう。


降り続く雪の粒が大きくなってきて、足元に積もり始めた雪があらゆる音を吸い込んでいくから、街は静かだ。
そんな冷たい静寂の中に、ルカの凛とした声だけが響く。


「俺も……この能力(チカラ)を手に入れるまでは、キナコと一緒だったから……わかるんだ。言いたいこと言えなくて、自分の中に本音を押し込むあの窮屈な気持ち」


能力を手に入れるまでは――。よくわからないけど、超能力って、そういうものなのだろうか。

とにかくルカも、最初から人の気持ちが聴こえるわけではなかったんだ。


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