スノウ・ファントム
* * *
死んで間もないころの俺は、あの白い世界でどう生きていいのか戸惑う毎日だった。
雪の中を歩けば俺と同じ、人の形をした幽霊と会ったけれど、みんな自分の未練を解消することにしか興味がなく、新参者に親切にしてくれる者はいなかった。
でも、彼らの様子を見ていたら、どうもここから地上の様子を見ることができるらしいということに気がついた。
見よう見まねで手のひらを雪にかざすと、そこには俺の好きだった女の子が映し出された。
「……すげえ」
すっかりこの能力が気に入った俺は、来る日も来る日もキナコの様子を見守り続けた。
その間に、彼女の考えていることが自然と心の中に流れ込んでくることにも気がついた。
(言いたいことを飲み込む性格……俺そっくりだ)
彼女の内面を知るたびに、愛しさがつのる。
でも、ただ見ていることしかできないなんて――。
そんな歯がゆさを切実に感じ始めたころのこと。
「……地上に降りる方法を知らないのか?」
この世界に来てから、初めて俺に声を掛けてくれた人がいた。
振り返った先には、輝く白銀の長髪、青い瞳のきれいな男の人。
それが、俺とキョウさんの出会いだった。