スノウ・ファントム
広い空は鉛色の雲に覆われ、私の声を阻んでいるように見える。
「ルカ……っ! お願い! お願いだから、ここにきて……っ!」
それでも諦めきれなくて、もう一度、大声で叫ぶ。
目の端からこぼれそうな涙をぐっとこらえて。
(まだ……もう一回。ルカに、届くまで……)
雲を睨み、すうっと息を大きく吸い込いんだ、そのとき。
「ル――」
「ルカ! 僕からも、頼む……! 話がしたいんだ! それと……きみに、謝らなくちゃ……っ」
突如、隣に並んだひとつの影。
私よりもさらに大声で、声を枯らしながら上空に呼びかける葉村くんが、そこにいた。
「僕は、嘘をついてたんだ……! 誰にも気づかれずに死にたいなんて、嘘だよ……。本当は、誰かに引き留めてほしくて、心配してほしくて……だから、きみに内緒で、電車に飛び込もうとしたり……佐々木さんを困らせるようなことばかり言って、同情引こうとしたり……っ!」
(葉村くん……)
なりふり構わず、感情を爆発させるように声を荒げる葉村くん。
きっと、今まで誰にも話したことのない心の内。
それをさらけ出してまで、彼もルカを呼び戻そうとしてくれている。