スノウ・ファントム


「ルカっ!」


そんな彼に触発されるように再び声を上げた私に、葉村くんも続く。


「聞こえてるんだろ! ルカ……っ!」


ふたりで、何度その名を呼んだだろう。

声がかすれてきて、あきらめの気持ちがわずかながら生まれてきてしまった頃――


空を覆っていた雲が切れて、その隙間から太陽の光が差した。

急速に流れていく黒い雲に変わって、夕暮れの空が顔を見せる。

その明るい景色を呆然と眺めていると、オレンジ色の空から小さな雪が舞い始めた。


(晴れてるのに、なんで……)


手のひらを上に向け、花びらのような白い雪を受け止める。

その小さな粒は、かすかな冷たさを感じた一瞬で、すぐに溶けてしまう。

そのはかなさに、寂しい気持ちが共鳴して、涙がひとつぶ頬を伝った。


「ルカ……っ、なんで、いないの……っ」


肩を震わせ、消え入りそうな声でつぶやいた時だった。



「……聞こえてるよ、ちゃんと。キナコ……俺は、ここにいる」



誰もいないはずの背後から、そんな声が聴こえてきた。


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