スノウ・ファントム
「ル……、!」
振り向いたのはいいけれど、ぶわっと、目にこみあげてきた涙のせいで、彼の姿がぼやけてしまう。
ルカ……戻ってきてくれたんだね。
私たちの声、届いていたんだね。
「ふたりとも、空の上までうるさいくらいだ。ちょっと、やることあって……ここを離れただけなのに」
苦笑したルカが、私の頭をぽんぽんと撫でる。
ますます涙腺を刺激された私は、うつむいて鼻をすすった。
「ところで……葉村。お前に、会わせたい人がいるんだ」
「え……?」
よく見ると、ルカの一歩後ろにはもう一人別の人が立っていて、その人が葉村くんの目の前まで歩いてきた。
二十代くらいの、若い男の人で……彼は綺麗な黒い瞳を葉村くんに向け、口を開く。
「……森田恭弥。そう言えば、わかるか?」
低い声で静かに尋ねた彼に、葉村くんは即座に目を見開いた。
(森田恭弥さん……って、もしかして……)
私も、その名前は今日聞いたばかりだったから、同じように驚いて、彼らの様子を見守る。