スノウ・ファントム


“駅のそばにあるmimi(ミミ)という雑貨屋から出てきたところを見たんだ。でも、すぐにどこかへ走り去ってしまったからな――”


先生から教えられた手がかりを頼りに、私は街中を走った。


(ルカ……どこ……?)


私は先生が見た人物がルカであると確信していた。

なぜなら、その雑貨屋は、ルカと初めて会った時にもらった傘を売っていたお店だから。

店にはもういないだろうとわかっていても、私はそこを訪れ、雑貨には目もくれずルカの姿を探した。

そこに案の定彼の姿はなく、私は店の周りや駅の中を、くまなく探し回った。

……しかし、収穫はゼロ。


「いない……」


やっぱり須藤先生の見間違いだったんだろうか。

だいいち、ルカがこの世界にいるはずはないのだ。

落胆しながらとぼとぼと帰路につき、電車に乗って地元に帰る。

そして、家の前まで来た時だった。



「……なんだろう。雪、だるま……?」



玄関の前にある、小さなコンクリートの階段の上に、ちょこんと座っている、小さな雪だるま。

目はビー玉。どんぐりを連ねて作られた口は、にっこり笑っている。

そしてふっくらと丸い体には、一枚の小さなカードが刺さっていて。


< 138 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop