スノウ・ファントム


今日初めて話したばかりなのに、会話の内容に全く遠慮がない山野にちょっと引きつつ、俺はしれっと答える。


「ないよそんなの。名前も顔も知らない女子を好きになるやつがどこにいるんだ」

「それもそっか。……でも、進展あったら教えろよな!」

「だからないって」


その後も山野と大して実のない会話をしながら、俺たちは塾を出て駅まで一緒に帰った。


(明日からは、学校でも山野と話すのか。あいつのテンションについてくの疲れそう)


反対方面のホームに向かった山野と別れ、一人乗り込んだ電車でそう思う。

でも決して憂鬱なわけではなく、無味無臭だった俺のテキトー生活がちょっとだけ風味づけされた気がした。







「おい持田! なんでまた俺がお前の代わりに女子を振らにゃならんのだ!」


山野とつるむようになってひと月ほど経った、十月の中頃。

昼休みの屋上で壁にもたれて座り、ぽかぽかした日差しと心地よい風に吹かれていた俺のもとに、山野がぷりぷりしながらやってきた。


「……また来たんだ」

「勘弁してくれよ、これで七人目だぞお前」


山野は吐き捨てるように言うと、どかっと隣に胡坐をかいた。



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