スノウ・ファントム
どうやら山野のおかげ(?)で、俺の印象が以前より柔らかくなったらしく、女の子から告白されることが増えた。
しかし、なぜかみんな俺本人じゃなく親しみやすい山野に“持田くんに伝えておいて”と頼むのだ。
「俺は毎度おこぼれにあずかろうと思ってその子たちをやさしく慰めてやるってのに、誰一人としてなびきゃしねぇ!」
「それは山野の下心が見え見えなんじゃ……」
「うるせぇ! 健全な高校生男子に下心がないやつはいねぇ!」
鼻息を荒くして宣言する山野がおかしくて、ははっと声を上げて笑う。
俺は山野のこういうところが好きだ。
バカ正直で、思ったことを全部口に出すところは長所でもあり短所でもあるけど、自分にはできないから、羨ましい。
「でもよー、そろそろみんな“北高の彼女”について探り入れだしてるぞ? やばいんじゃねーの? 彼女どころか“話したこともない”っつーのは」
「うーん。そうだなぁ……」
実は、山野のもとに来る告白は、全部同じ口実で断ってもらっている。
それは今山野が口にした通り、他校に彼女がいるという極めて無難なもの。
でも、その“彼女”は全く架空の人物というわけでもなく、何を隠そう塾で一緒になる、“アイアムピジョンハート”の女の子のことなのだ。